シナリオ『アンハッピーバースデイ』リファイン案

 先月公開したシナリオ『アンハッピーバースデイ』ですが、つい先日身内卓においてようやくテストプレイをする運びとなりました。結果、シナリオ進行上致命的な問題は起こらなかったのですが、感想戦に置いて身内卓の面々と相談を重ねた結果、複数個所において改善の余地が発見されました。そこで今後一か月ほど、全体的な流れを変えることはしませんが、シナリオ構造を変化させ、一部冗長と思われる部分を削除・別途情報に入れ替えることによって、シナリオ全体のリファインを行い、シナリオの完成度を極限まで高めていきたいと考えています。
 そこで、今回はテストプレイの結果見えたシナリオの問題点や改善点を列挙していき、それらをどういう方向でシナリオの修正に反映していくかの構想を書いていきたいと思います。当然ながらシナリオのネタバレを多分に含みますので、シナリオ未見の方はご注意ください。
なお、先週予告していたシナリオ解説や伏線解説は順延となります。期待されていた方には申し訳ありません。



以下ネタバレを含む感想です。ここからはシナリオを既に読んでいるか、プレイ済みということを前提に記事を書いていきます。
未プレイの方はネタバレに注意してください。



○警察官PCの比重が大きい
 このシナリオは中盤まではともかく、それ以降は警察官が立場上手に入れることのできる情報が多く、また被害者の死亡状況や黒幕の意図につながるような重要な情報の多くが警察側から出てくるために、どうしても警察官PCの比重が大きくなってしまいます。
【改善の方向性】
 これに関しては改善が難しい問題だと認識しています。というのも、警察で得られる情報の性質上分散が難しいものばかりだからです。根本的な解決は難しいため、情報をイベント化して探索者全員に遭遇させたり、他PCの役割をより充実させるなどの対症療法にならざるを得ないかと思います。

○探偵の立場が宙に浮いている
 このシナリオは導入から中盤にかけて変則的な流れになっていますが、その流れを形作る上で探偵PCは「主要NPCから依頼を受ける」という、オーソドックスながら、シナリオの軸となる働きをしています。ところがシナリオ中盤以降、警察官PCがシナリオ進行を情報面でリードし、麻希と関係性の深いPCがRP面で活躍を見せる中、その狭間で探偵PCがシナリオ解決に寄与する動きをしにくいという問題点が浮かび上がりました。具体的には、いまいち正体がつかめない黒幕の尻尾を追っかけ回すばかりで、その中で黒幕に関する謎の一端をいくつか解き明かしたとしても、問題の解決や事態の改善に寄与するものではないということです。
【改善の方向性】
 この問題は後述する「探索者がシナリオ解決に貢献しているという実感が薄い」という問題と併せて考えております。具体的な対策としては、新たに探偵が自分の特色を生かして得ることのできるヨグ=ソトースの娘の対抗手段や弱点に関する情報を設けるといった方向で考えております。
 
○〈被害をそらす〉の描写がわかりにくい、直接攻撃するメリットがわかりにくい
 このシナリオの最終戦はヨグ=ソトースの娘の使用する《精神力吸引》の呪文に対する対抗手段として物理攻撃ないし化学的攻撃を行って《被害をそらす》呪文を使用させ、一方的に相手のMPを削るという手段をとることができます。しかし、この《被害をそらす》呪文ですが、リアルクトゥルフ神話技能が一定程度ある人はともかくそうでない人にとってはわかりにくく、また《自然に還す》呪文を使用せずに直接攻撃するメリットがわかりにくいという指摘がありました。
【改善の方向性】
 描写に関しては、MP対抗ロールにおけるヨグ=ソトースの娘のMPを常時公開する(MPの減少を分かりやすくする)ことで代書しようと考えています。また、後者の問題の原因はヨグ=ソトースの娘が《精神交換》というMP量が重要な呪文を使おうとしているという事実を探索者たちが知らないことに起因しています。この呪文を探索者に開示するのは流石に難しいので、《自然に還す》の呪文の内容において「呪文の完了までに数分時間がかかる」ことを明示化し、また「ヨグ=ソトースの娘が何本かの触手で複雑な印を組んでいる」という描写を加えることで、PLに対し一方的にMPを吸収され続けることの危険性を意識させようかと考え中です。

○探索者が問題解決に貢献しているという実感が薄い
 今回のシナリオにおける最大の武器である呪文《自然に還す》ですが、その入手方法は「秋月麻希が見た奇妙な夢の情報を探索者たちが会話の中で偶然入手し、次の日になぜか夢の中で知ったという呪文の情報を入手する」、というものです。これは麻希と関係が深く、シナリオ内での接触が多くなるであろうHO2,3の探索者が「麻希との関わりの中で入手し得た成果」という位置づけで当初考えていました。しかし、所詮これは誤魔化しに過ぎず、冷静に見れば「解決手段が天から降ってきた」とでもいうべき事態であり、探索者が問題の解決に寄与していないという重大な問題が放置されています。
 本シナリオは自由探索パートにおいて巷で起こっている事件が秋月親子を狙うものであることから、彼女たちを守らなければならないという探索者たちの行動の流れがまず想定されています。それと並行して黒幕の正体や意図を探ろうとする思考から千草が過去に起こした事件、そしてその狭間に見える神話的存在の影を知り、新たな謎にして最大の謎、即ち「なぜ黒幕は千草以上に麻希を憎んでいるのか?」の答えを最終的に知る……という流れを想定して作っていました。
 当初は「こういうシナリオもありなんじゃないか」と軽い気持ちで考えて作っていましたが、実際やってみるとやはりいまいちピンと来なかったようです。
【改善の方向性】
 《自然に還す》呪文ですが、これに関してはシナリオの重大な伏線と密接に関わっているため、これを削除することは難しいです。そのため、麻希から手に入れるという部分は変えず、探索者のなんらかの行動をトリガーとしてこの呪文を手に入れられるような形に修正しようと思っています(20年前の事件の話を知ることで「まどろみの中で」のイベントが発生するなど)。
 また、先に述べた通り主に探偵PC側からも事件解決の手がかりを別の形で手に入れられるようにしようと考えています。他にも、「黒幕は千草以上に麻希を憎んでいる」という点をもう少しわかりやすく強調したいと思っています。

○ヨグ=ソトースの娘が持つ脅威としての存在感が薄い
 残される死体とゼラチン質の黒い粘液、そして麻希が感じる視線や感覚といった情報や痕跡以外、ヨグ=ソトースの娘はニアミスのイベントに遭遇しなかった場合はシナリオ終盤まで探索者たちの目の前に姿を現しません。姿の見えない脅威に怯えるというのはラブクラフト原作でもある話ですが、もう少し緊迫感を演出したほうが良いとのことでした。
【改善の方向性】
 シナリオの構造上殺害の方法などは変えにくいため、これを改善するとなるとニアミスのイベントを選択イベントではなく自由探索中盤に起こる通常イベントに変更し、その場において姿が消える瞬間などを見てしまうといった演出を加えようかと考えています。
 そのほかの手段としてはヨグ=ソトースの娘をより弱体化し、透明化の能力をより不完全にして一時的にしか姿を消すことができないといった形にしようかとも考えています。

 他にも改善点はありますが、主として上に挙げた点を中心にまずは改善していこうと思います。前作もそうでしたが、今回はより詳細に「テストプレイを経てシナリオを改善する過程」をお伝えしたいと思います。具体的なシナリオ製作の方法については色んな方が書いておられますが、シナリオのリファインに関しての解説はあまりないと思うので(そもそも需要というか必要性がないのかもしれませんが)、どなたかの参考になれば幸いです。


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