クトゥルフ神話TRPGセッション『I will regain it』感想その5

 身内のPLのシナリオ書き起こし・編集とサイトマップ作り、自作シナリオ第2弾などクトゥルフ関連で色々と忙しいですが、今週からは通常の記事の更新をしていきます。
話は変わりますが明日、初のPL5人卓の試みをすることになっています。五人になることで極端に勝手が変わるということもないでしょうが、この経験を生かして何かキーパリングの役に立つことが見つかればいいなと思います。ちなみに、私が明日回すシナリオは内山御大作の『延命病院』です。御大の公開しておられるシナリオももう残りあとわずかとなってきましたね。
 さて、そろそろ本編のほうに入っていきましょうか。今週は『I will regain it』の最終盤からの再開ですね。
※この記事はクトゥルフ神話TRPGセッション『I will regain it』感想その5です。その1~4をご覧になっていない方は、先にそちらをご覧ください。
その1 その2 その3 その4 その5 シナリオ

以下ネタバレを含む感想です。ここからはシナリオを既に読んでいるか、プレイ済みということを前提に記事を書いていきます。
未プレイの方はネタバレに注意してください。



 AOOA幹部連中を瞬殺し、戦闘終了となったわけですが、探索者達はまずジャックの治療をしようと駆け寄ってきました。そのためジャックに自分は大丈夫だからとこれを拒否させ、教祖の捕縛を優先してくれと頼みます。探索者達は手持ちの道具を使って教祖を縛り上げますが、そこにジャックのスタングレネードが炸裂。探索者達が数ラウンドスタンする中、ジャックは「テリーやキムにまた会える・・・」と呟きながら銀の鍵を掲げ、探索者達、そして拘束されている教祖岩山も巻き込んでタウィル・アト=ウムルの元へと向かいます・・・。
【キーパリングメモ】
 シナリオ上ジャックの下に探索者が集まってしまうとスタングレネードが使いにくくなってしまうため、塔上の戦闘終了後はエイボンの書を回収してくれ、教祖の死亡を確認してくれと言うなどして、確実に探索者達がスタンするような状況を作りだせると良いです。ジャックを警戒して離れないようなら、治療をしに来たPCを人質に混乱を作りだした隙にでもスタングレネードを起爆させましょう。
 私が回した際は教祖岩山が中途半端に生きていたため、最終盤の異空間まで付いてくると言う裁定を下しましたが、正直これはやめておいたほうがいいのではないかと思います。これまで共に戦ってきたジャックとの対立というシーンで終わったNPCである岩山が今更出てきてしまうと、シーンの印象が薄れてしまうからです。岩山を生かそうというPCが居る場合、先手を打って危険な存在だからという理由で岩山を殺すよう諭すか、あるいは自分自身で殺してしまってもいいと思います(実際生かしておくにはあまりにも危険すぎる存在です)。

 タウィル・アト=ウムルに呼び寄せられた空間はいくつかの空間に分かれており、ジャックは既に先行して先を歩いていました。「これはヨグ=ソトース様の思し召しじゃ!」とかなんとか抜かす教祖岩山を尻目に探索者達がジャックの後を追うと、ヨグ=ソトースの化身タウィル・アト=ウムルの座る部屋に出ます。ここで継続探索者三人は〈クトゥルフ神話〉技能を使用、羅生門組の大学生2人は失敗しますが、PC1は1クリで成功。マレモン記載情報の概要を開示します。
 対面イベントを挟んだ後、探索者達が別世界の妻と娘は同じものではない、死んだ人間は生き返らない、殴る(受け流し成功)などとジャックの説得を試みますが、彼が不定の狂気中であることと性格的な面から応じさせませんでした。自分たちを元の世界に返してくれという交渉も、銀の鍵の仕様上無理だとタウィル・アト=ウムルに答えさせました。
【キーパリングメモ】
 銀の鍵を持っている人間の意思で世界や時間を越えることができるという仕様は私が勝手に生やしたもので、原作準拠ではありません。
このシーンで問題になったのが、ジャックが信頼され過ぎる点と探索者が生き残るためにはジャックと戦闘をせざるを得ない点です。前者に関しては二つ理由があり、ジャックの裏切りの布石が殆ど得られなかった(序盤の精神分析のみ)ことがまず一つ、そして一部PLがジャックの性格を誤解していた点です。ジャックはシナリオ中の事件を共に追うNPCであり、その壊れ性能も相まって信頼を勝ち取りやすいNPCではあるんですが、序盤のイベントを気に留めず終盤まで来てしまったことから、「信頼していたジャックに何の前触れもなく突然裏切られた」と思われてしまいました。また、シナリオ中のジャックの行動は基本的に原作に準じてのものですが、一部PLは中途半端にジャックを知っていたために、仲間に対して銃を向けたり傷つけることはないと思っていたようです。最新版では前者の問題は起こりにくいと思いますが、後者の問題が起こった場合は全エピソードを2~3周しているシナリオ製作者のジャック観であると説明してください。後者の問題はシナリオ構成上の問題ですね。銀の鍵で探索者だけを元の世界に帰せるのであればこのイベントは完全な蛇足となってしまいますし、相当な期間不定入りしている人間をたった数日関わった人間が考えを180度変えさせるというのは言わば黒幕を改心させるようなもので、私には受け入れられませんでした。ただ、シナリオを通じて共に戦った仲間と戦うということに抵抗があることは理解できますし、所詮は一人のNPCなので、シナリオ中におけるPCとの関係及びこの局面でのロールプレイ次第では、また別のエンディングもあり得ると思います。この点の処理に関しては、回していただくKP様に一任したいです。

 ジャックは銀の鍵を渡さない構えのため、戦闘に入ります。PC1はスタンガンを持っているものの受け流し回避のため手番を遅らせ、先に大学生コンビの日本刀技能とPC4の初期値こぶしで攻撃をかけます。PC2は命中ロールに失敗、PC4は素人のこぶしを受け流すまでもないと判断してそのままダメージ、PC4の日本刀技能を受け流します。しかし、この時の受け流し〈拳銃〉ロールにクリティカルが発生、カウンター射撃によりPC4が重傷を負います。とは言え、受け流しを消費したジャックは続くPC1のスタンガンによりスタン、戦闘終了となります。
 戦闘終了後、探索者達は銀の鍵を持っている限り世界線を越えることができることをタウィル・アト=ウムルに確認すると、とりあえずジャックを彼の望む世界、つまり妻と娘が生きている世界へとまず彼らは連れていきました。ジャックはスタン状態継続中なため、今後の方針を決める探索者達。ジャックは異世界人なためこの世界に放置してはこの世界が崩壊すると判断し、ジャックを最終的には連れて帰ろうと決め、とりあえず満足してもらうため妻と娘に合わせようと彼女たちを呼びに行こうとしました。しかし、KPたる私がそういうニュアンスならタイム・パラドックスが起きた時点で世界が崩壊する可能性はあると発言、遠目に見せるだけにとどめることとなりました。生きた妻と娘を見ると、涙を流すジャック。探索者達はこれで満足したろうとジャックを元の世界に連れて帰ろうとしますが、私はこの状況でジャックは帰ろうとしないだろうと判断し、銃を自分に向け、自分の命を盾に、探索者達にそのまま帰るよう言います。探索者なりに彼を救おうと考えた末、結局はここに置いていくことを決め、餞別代りに各PCゆかりの品々をジャックにプレゼントし、PC1が最後にみんなで写真を取ろうと提案します。彼の〈写真術〉ロールは100ファンを出し、全シナリオの死闘を潜り抜けたカメラが壊れてしまいましたが、PC3も記者バイトという設定で一眼レフを持っていたため、それで撮影。別れの言葉を交わしながら、元の世界線に探索者達は帰ります。
 元の世界に戻ると塔は既に消えており、塔があった場所はただの更地になっていました。手に持っていたはずの鍵は消えており、持っているのはエイボンの書のみです。探索者達が帰ってくるとジャックの発信機の信号が消え、心配して探しに来たトニーに出会います。「ジャックはどこかへ行ってしまったが、彼の望みは果たしたよ」とトニーに伝え、エイボンの書と引き換えに報酬の小切手をもらうPC達。「ジャックは本当に家族思いだったんです。それがあんなことになって…。この任務が少しでも彼の傷ついた心を和らげてくれればいいんですが。」と言い、その場を後にしてシナリオ終了です。
【キーパリングメモ】
 このシナリオ全体にいえることですが、戦闘自体はほぼイベント戦闘のようなもので、難易度を高くしすぎないようにしましょう。このシナリオ執筆時はNPCであるジャックにこんなに愛着を抱かれるとは想定しておらず、ここに至って殺す以外のルートを想定しておらず、失神させてジャックを生かして自分たちの世界に連れて帰ろうとし始めたときは、非常に焦りました。とりあえず、銀の鍵の仕様を変更し(理由は旧神に認められたとかニャルの采配だとかを考えてました)、ジャックの望む世界に行った後も使えるようにしました。
 この後のジャックの行動をどうするかが問題になるんですが、多分この状況に至ってはPLの望み通りにジャックが納得し、全てが丸く収まったとして終わらせるKPもいる・・・というか多いでしょう。実際、その方が喜んでもらえると思います。じゃあなぜ私がこのようにジャックを動かしたかと言いますと、これは私のキーパリングのポリシーがかなり関わってきます。私がクトゥルフ神話TRPGのKPを務める時心がけていることとして、セッションを通じて探索者の一生の物語を紡ぐ・・・というものがあります。そのため、KPなら誰でも経験したことがあるであろう、ダイスの出目を操作したくなる瞬間(PCの事故死など)も一切出目を操作はしませんし、(全滅やシナリオの詰みに関わるものならともかく)情報の取り逃しも、どこか別のところで出すということはせずにそのままにしておきます(上手い動きがあればその時に出したりもしますが)。それと同様に、NPCもきちんとした設定のあるキャラクターなら、その性格に沿った思考・行動を行わせることを心がけています。もちろん探索者の立場を奪うほどではないですが、私なりにそれぞれのNPCの生涯をシナリオ中で描こうと努力をしています。そのため、今回のような状況では不定の狂気中というのもありますが、どうしてもNPCの性格を捻じ曲げるような裁定はできませんでした。これは一個人の考えであり、“普通の”KPの考えとは異なるものかもしれませんが、あくまでキーパリングを考える上での参考としてここに記しておきます。
※あくまで気心の知れた身内卓でやるから許されるという点が大きいので、こだわりを持つこともいいですが、コンベンションや初対面のセッションなどでは集まったPLのスタイルに合わせてキーパリングを変えることを強く勧めます。
 話がそれてしまいましたが、エイボンの書の扱いに関して最後に述べておきます。シナリオ中で「国家の安全にかかわる」と形容されていたこの本ですが、地球を何回も滅ぼす程度の力は持っているので別に誇張でも何でもありません。また、あくまでこのシナリオはハリウッドスタイルであり、シナリオ全体の難易度もそこまで難しいものではないので、この魔導書を与えてしまうのはちょっとやりすぎかなと個人的には思います(扱いは回してもらったKP次第ですが)渡したくないのであれば、隠匿すれば今後CIAないしATUに狙われることになるとでも言っておけば脅しになると思います。シナリオを通してその力に関しては察しがついているでしょうから、効果はてきめんでしょう。


 さて、大幅に遅れてしまいましたが、ようやっと投稿できます。言い訳をするならば、『延命病院』のセッションと感想戦が長引いてしまったことと、翌日は一週間の疲れから一日中寝てしまったことでしょうか。いやはや、期待していた方には申し訳ないです。月曜日の投稿ということになってしまいましたが、今週の金曜日の記事はクトゥルフ神話TRPGサプリ『クトゥルフカルト・ナウ』の紹介記事を書こうと思います。サプリを買うとだいたいどこかしらに「これはシナリオに使えるな」と思うシナリオフックがあるものですが、このサプリに関しては全ページにわたってシナリオフックが書かれていると言っていいでしょう。純クトゥルフシナリオを書こうとしているなら、ぜひ持っておきたい一冊です。
 それでは今回はこの辺で。また今週末、お会いしましょう。

クトゥルフ神話TRPGセッション『I will regain it』感想その1 その2 その3 その4 その5 シナリオ

この記事へのコメント


この記事へのトラックバック