『”DEATH" in the eye』Ver1.1.0

 お久しぶりです。とりあえず非常に忙しい時期が終わったので、ぼちぼちブログの方も再開していきたいと思います。また2月前半は日本にいなかったりでしばらく忙しいんですが……。
 今回は忙しい時期で死ぬような思いをしている間にパッと思いついたアイデアから生まれた短~中編シナリオ『”DEATH" in the eye』のプレ公開となります。シナリオ自体はオーソドックスに連続猟奇殺人事件を調べていったら神話的怪異に遭遇し、探索者が事件を解決しようとするといった内容です。総文字数11000字ちょいと私のこれまでのシナリオに比べてだいぶ文字数が少ないことからもわかるように、だいぶシナリオの形式を変更しています。手に入る情報と場所とイベントによって大きくセクションがわけられていますが、こうした形式変更にはシナリオ進行の自由度を高める目的があります。テストプレイとその後の修正を経た完成版では、シナリオへの導入をよりしやすくしたいと考え中です。
 前置きはこれくらいにして、とりあえず本編へと移っていきましょう。

3月5日追記
 お待たせしました。『”DEATH" in the eye』の本公開となります。テストプレイの結果を受けて3000字くらい加筆と修正を行いましたが、これによって自由度の高いシナリオにしてはだいぶ回しやすくなっていると思います。現代日本のシナリオに比べ『星辰正しき刻』のシナリオを回しにくいと思われる方は多いと思いますが、その練習用にでもどうでしょうか。





『“DEATH" in the eye-その瞳に映るは死-』Ver1.1.0

マップデータはこちらから

1.シナリオ概要
 探索者たちはそれぞれの理由からS市内において発生している連続猟奇殺人事件に触れ、調査することになる。調査を進めていくうちに浮かび上がる謎の男と医院の存在を調べていく中で、探索者たちはやがて一連の事件の裏に潜む神話的脅威と対面するだろう。探索者たちはこの事件に終止符を打つことができるだろうか。


2.シナリオ背景
 かつてレンのガラスはドリームランドのレン高原に存在したただ一つのアーティファクトだが、ある日ミスカトニック大学の卒業生によって持ち出されてしまった。しかし時を経た現在、レン高原において勢力争いを展開する野心的な三体のムーンビーストがレンのガラスの模造品(以下、レンのガラスコピー)を作り、勢力争いに利用する計画を立てた。
 ムーンビーストたちはレンのガラスの製法をレン高原に残された断片的な石板群からしか得られなかったため、完成度の高いコピーを作るためには更なる改良が必要だった。しかし、レンのガラスコピーは危険な代物であるため、下手に試験に失敗すれば自分たちが怪物に襲われかねない。そこで彼らは地球の人間を実験台にしようと考えたのであった。
 彼らは奴隷であるレンの男を連れて地球に降り立つと、手近な空き家に拠点を構えて情報収集を開始した。彼らは地球における情報収集の結果人間の人工水晶体にガラスが使われている事実を突き止めると、レン高原で採れるダイヤモンド鉱石によって高原医師を買収し、レンのガラスコピー作成計画に協力させるよう仕向けたのであった。


3.KP情報
○「レンのガラスコピー」の性能
 レンのガラスは白みがかった曇りガラスのような代物であるが、術者がその近くで赤いチョークかほこりで五芒星を描き「ふんぐるい、むぐるうなふ、くとぅるふ、るるいえ、うがふなぐる、ふたぐん」と呪文を詠唱することで透明になり、無作為に神話生物の姿を映し出すといった性質を持っている。
シナリオに登場する「レンのガラスコピー」はレン高原に散在していた、レンのガラスの製法が記された石板から得られる断片的な情報から作り出したものであり、不完全なものとなっている。「レンのガラスコピー」はオリジナル同様、空間をつなぐ《門》のような役割を果たすが、不完全であるためガラスに写されるのは常にレンのクモ(ドリームランドにあるレンのクモの棲み処が映されているのだ)であり、現世にレンのクモが姿を表そうとすると、空間を渡り切る前にガラスが割れて門が消滅してしまう。ムーン・ビーストたちの目的は、レンのクモの出現に耐え得るレベルまでこのガラスの強度を上げることである。
○推奨される探索者
 このシナリオでは武力による解決とスニーキングによる解決が可能であり、戦闘技能を中心とするパーティか隠密系技能を中心とするパーティがこのシナリオをクリアする効率としては良い。が、相手はムーンビーストのみであることから、その折衷案のほか、頭を使った探索を行えば十分に目的が達成可能であろう。
 その他の技能としては基本的な探索技能があれば十分クリアが可能であるが、〈医学〉や〈精神分析〉がとりわけ有用であり、また交渉系技能があると聞き込みなどの際に役立つだろう。
○レンの言語の解読
 このシナリオにはレン高原で使用されている未知の言語が登場するが、レンの男が持つ簡易辞書とレンの男の部屋にある辞書を利用することで対応する言語の半分の値で解読ロールに挑戦することができる。成功した場合に得られる情報はKPが内容を参考に必要と思う断片的な情報を与えること。経過時間も任意とする。


4.シナリオへの導入
○連続不審死の捜査(警察枠) (初心者推奨)
 S市警は連続不審死事件に関して捜査本部を立ち上げて捜査を行っているものの、数か月が経過した今も殆ど手がかりらしいものが見つからない状況が続き、ついには現職警察官にまで被害が及んだこともあり、警視庁から事件の捜査権を奪われそうになっている。そのため、S市警は部署の制限なく幅広い人員を採用して捜査本部の人間を増員し、早急な解決を図ろうとしている。
○警察に雇われた(自由警察枠) (初心者推奨)
 メンツを保つために手段を択ばず事件を解決しようと考えたS市警は、事件の捜査に外部有識者を活用することに決めた。探索者はその一人としてこの事件の捜査に携わることになる。
○友人の不審死(初心者推奨)
 探索者が友人と談笑していると、神話生物が友人の頭を食いやぶって出てくるのを目撃する(イベント【瞳の中の“死”】を参考)。市内で発生している連続不審死事件の正体を目の当たりにした探索者は、友人の敵を討つべくこの事件を解決しようと試みる。
○ジャーナリストの死
 S市内を騒がせている連続不審死事件を追っていた同僚が失踪した。あなたは同僚が事件に巻き込まれたものと考え、手がかりを求めてこの事件を探ることになる。
○眼科に用がある(場合によっては超ハード)
 あなたは何らかの理由で眼科にかかろうと思っている。どうもあなたの家の近くにちょうど高原眼科という眼科があるようだ。少し調べたところ、評判の良い医師がリーズナブルな値段で診療をしているらしい。あなたは何一つ疑うことなくその眼科に赴くが……?



5.基本的な制約
【警察について】
 警察は基本的に幽霊屋敷云々の類の話に関しては信用しない。写真やビデオを持っていったとしても、基本的にはトリックか何かだと一蹴する。探索者たちは捜査本部からすると新顔あるいは部外者であるため、かなり核心的な情報を最初に持っていかない限り、すぐに信用をなくして取り合ってもらうことすらされなくなるだろう(もしかすると、親切な警官が味方についてくれるかもしれないが……)。
 最終的にはキーパーの裁量で決めてよいが、通常このシナリオで警察を味方につけるためには、基本的には屋根裏部屋の女性警察官による証言などが必要である。この場合警察は屋敷を包囲し、探索者の協力のもと制圧を試みる。警察官の協力を得た上での力押しなら、事件をアグレッシブに解決することができるだろう。


6.S市連続猟奇殺人事件
【S市連続猟奇殺人事件について(一般情報)】
 この情報はニュースなどを見ていれば当然知っている。
 ここ3か月にわたってS市内を中心とした一帯で発生している連続猟奇殺人事件であり、被害者は22名を数え、被害者の遺体はいずれも頭部が酷く損壊している点が共通している。被害者は当初高齢者が多かったものの、ここ1か月は特に若い世代が狙われている。

【S市連続猟奇殺人・失踪事件について(警察関係者追加情報)】
 この情報は警察関係者が得ている事前情報だが、一般人のみのパーティでも4時間かけて適当な調査方法で〈図書館〉ロールに成功すれば、この事件の報道に関する週刊誌・地方紙の情報を総合することにより同じ情報を得ることができる。
 詳しい殺害方法は不明だが、被害者の遺体はいずれも頭部を中心に上半身を動物か何かに食い破られた跡が残っており、最近になるにつれ死体の損傷が酷くなっている(死体の上半身がほぼないほど)。監視カメラを避けて犯行が行われており、目撃者も殆どが食われるようにして殺害されている。かろうじて犯行を逃れ生き延びた目撃者が入院しているものの、重い精神障害を患い意味不明な証言しか得られていない。一部報道によると外国人の犯行であるという未確認情報があるものの、裏付けはなされていない。
 また、ここ半年ほど通常より速いペースで失踪者が増えており、最近ではこの事件との関連性が疑われている。つい三日ほど前には失踪事件を担当していた女性警察官も職務中行方不明になっている。

【雑誌から得られる情報】
 一部ゴシップ紙などの情報では「犯人はインド人!?」といった見出しの記事が載っており、事件現場付近でターバンを被った男が居たという目撃情報が寄せられている。そのほか、KPが捕捉したい情報があれば自由に追加してよい。
 また、『マー』というオカルト誌の情報では佐藤という人物が書いた「連続殺人事件は悪魔召喚の儀式か!?」といった見出しの記事で、事件現場付近に魔法陣の跡が残されていたという記述と“悪魔”召喚の儀式なるものが載せられている。シナリオとは関係ないがこの記事にはオカルトの内容を超えたクトゥルフ神話に関する情報が書かれており、〈オカルト〉に成功するとそのことに気が付き、〈クトゥルフ神話〉が1点上昇する。

【失踪者の調査】
 このシナリオではS市連続猟奇殺人事件の三か月前から失踪者が増加しているが、これはムーンビーストの拷問癖を満たすべく拠点周辺のやや広い範囲から適当に人間を攫っては地下に監禁し、死亡したらまた新しい人間を攫ってといった行動を繰り返しているためである。このため失踪者のパーソナルデータには一切の共通性などがないものの、失踪者の最終目撃地点を総合して分析すると、拠点を含む地域一帯に集中していることがわかる。

【猟奇殺人事件被害者の調査】
 警察のデータベースを〈図書館〉で精査するか、遺族への聞き込みを交渉系技能などによってうまく行えば、被害者に多く共通する特徴として水晶体を入れ替える眼科の外科手術を受けていることがわかる。老人たちは白内障との診断を受けており、ここ一か月間で起きるようになった若者の被害者も外傷性水晶体脱臼という診断を受けている。また、目撃者が一人S市内の病院に入院していることもわかる。

【目撃者への聞き込み】
 目撃者は面会謝絶状態であるが、適当な理由を付けるか交渉技能に成功すれば病室を教えてもらえる。
 目撃者は「頭が……食われる……」といったうわごとしか呟かないが、〈精神分析〉に成功することで「頭から8本足の怪物が……逃げ出したらインド人が……」と事件前後の状況をわずかに呟く。その後、再び取り乱して会話のできない状況に陥る。

【殺人現場で得られる情報】
 殺人現場は自宅、公共施設や商業施設など様々であるが、必ず監視カメラに映らない、人目につかない場所が殺人現場になっている。殺人現場を窺うことのできるやや離れた位置には、「レンのガラスコピー」の起動の際に描いたチョークの粉を拭きとった跡が残されている可能性がある。犯行日時が近い現場であれば〈目星〉によってこれを見つけることができるだろうし、時間が経過して痕跡がなくなっているような場合でも〈幸運〉に成功することで事件直後の現場に跡が残されていたことを何らかの形で確認できる。また、探索者たちのうち代表者一人が追加の〈幸運〉に成功すれば、描かれたものが五芒星であったことまでわかる。


7.高原眼科
【高原医師についての情報】
 この情報は聞き込みの他、眼科の評判をネットで調べることでも得られるだろう。
 高原蓮人医師は酒とギャンブルが趣味で、世間一般には無頓着というやや医者らしくない人物である。しかし非常に気さくな人柄であり、患者からの評判はおおむね良い。
 3か月ほど前から高原眼科では市場価格よりかなり安い値段で診療を行うようになっているが、以前勤めていた数人の看護師が値下げを行った時期に全員解雇されており、同時期に医師の羽振りが良くなったことなどと合わせ、減った分の人件費が患者に還元されているのだろうと認識されている。
 しかし、ここ1か月ほどは忙しいのか医院の外で高原医師が見かけられていない。診察を受けた患者も高原医師が激務からか少しやつれていたと証言する。また、近所では最近頭にターバンを巻いた外国人が買い物袋を手に高原眼科にたまに出入りしているため、世間では高原医師が彼に買い出しを頼んでいるのだろうと思われている。

【高原医師の現在の状況】
 現在高原医院には一体のムーンビーストが居住空間である二階に居座り、高原医師は医院の一階で軟禁状態にある。一か月前にたまたま見た報道から連続殺人事件との関連性に気が付いたのだが、その点についてレンの男を追求したところムーンビーストによって脅迫されるようになったのだ。以来、高原医師は健康な人間に対しても「レンのガラスコピー」を入れるよう強要されている。
 彼は悪徳医師ではあるものの猟奇殺人事件の片棒を担げるほど肝の据わった人物ではないため、精神的に不安定な状況にある。探索者たちが彼に接触した際には〈心理学〉を行わなくとも彼のやややつれた様子が感じられる。〈心理学〉に成功すれば、彼の振る舞いからは何かに対して酷く怯えており、何かと天井の方を気にしている様子であることがわかる。
 連続猟奇殺人事件を追って探索者たちがこの病院を訪れたとわかると、高原医師は藁にも縋る思いで密かに助けを求めようとする。挙動不審な様子でできるだけ会話を引き延ばし続け、しきりに目線を上に向けて探索者たちにアピールすることだろう。探索者たちは〈アイデア〉ロールに成功することで、彼が自分達に対し助けを求めているのではないかと感じる。しかし、探索者たちが彼のアピールに気付かない場合や、彼が助けを求めていることに関して発言するようなことがあれば、イベント【高原蓮人の発狂】が発生する。

【高原眼科の患者への聞き込み】
 探索者が最近手術を受けた人物に聞き込みを行えば、水晶体を入れ替える施術を安く行ってもらったものの、視界が白く濁って見えるという話を聞くことができる。高原医師によれば術後しばらくはこのような状態が続くらしいと説明するが、〈医学〉に成功すれば人工レンズ自体に問題がない限りそのような症状はあり得ないことがわかる。
 会話している場所が監視カメラに映らない場所である場合、何か話を聞くたびに患者の〈幸運〉ロールを行い、失敗した場合にはイベント【瞳の中の“死”】を起こす。このイベントは早期に起こされることが望ましいため、KPは会見場所を極力自宅などに誘導すること。

【S市内における眼科の情報】
 S市内にはいくつか眼科があるものの、高原眼科との価格競争についていけず経営が傾いている。話を聞けば、原価率を考えても儲けがないような状態で診療を行っているとしか考えられず、このままでは廃業の危機だと言う。



8.高原眼科における探索
【高原眼科】
 高原眼科は現在高原蓮人が一人で切り盛りしており、二階には高原医師の見張り役として必ず一体のムーンビーストが潜んでおり、計画を口外するなどの妨害や、病院から出ようとする場合には殺害すると脅している。
 高原眼科の一階にはムーンビーストに対して送られる予定であった◆報告書と◆高原医師の手記がある。イベント【高原医師の発狂】によってこれらの情報は自動的に手に入る。
 そのほか、高原眼科一階の診察室を捜索には患者のカルテや、デジタル顕微鏡の上に乗せられた1d3枚の「レンのガラスコピー」が見つかる。カルテを見て〈医学〉に成功すれば前者は明らかに誤診であること、後者については時間をかけて〈目星〉や〈化学〉の二倍に成功することで精巧な作りながら白く濁った、不純物の混じった人工レンズであるということがわかる。仮に失敗したとしても、レンズが白く濁っていることは素人目にもわかる。

◆報告書
 探索者には理解不能な言語で書かれているが、その内容は描かれている絵などから〈機械修理〉、〈アイデア〉の半分などに成功することで「レンのガラスコピー」がこの機械から生産されており、その調整に関する指示が載せられているのではないかと推測できる。
内容は以下の通り。
・何種類かの「レンのガラスコピー」が描かれており、そのうちの一つにのみ丸、他には×が付けられている。
・「レンのガラスコピー」の横には電子レンジと顕微鏡を組み合わせたような異様な機械が描かれており、その各部から線が引かれて短い文章が書かれている。
・形の異なる石板が何枚か図示されている。

◆高原医師の手記
 この日記の情報を得るには〈日本語〉ロールに成功すれば斜め読みで10分、失敗した場合は30分かかる。
 手記の中には高原蓮人が半年ほど前にレンの男の接触を受け、数億円以上の価値を持つダイヤモンド原石(レン高原で産出されたものである)と引き換えに人工水晶体サンプルの提供、及び粗悪品レンズのテストを行ってきたことが書かれている。彼は半年間の契約で彼らに協力し、契約が終わった後は換金して高飛びするつもりであったが、彼が連続殺人事件に加担していたことを知ると、後悔の念に苛まれていることが記述から推し量れる。以下は一か月前から断続的に書かれた内容の抜粋である。

 間違いなく殺されているのは私が手術を行った患者だ……どういう仕掛けか知らないがやはりあの白く濁ったレンズに何か秘密があるに違いない……。
 裏の人間の新しいシノギか何かだと思ったんだ……まさか連続殺人に加担しているとは……。

 奴らの目的は何だ……?渡された試作品を密かに調べてみても、何を目的にテストし、新しいレンズをテストしているのかがわからない。精々濁り具合が変わっている程度だ。

 レンズの製造方法も謎だ。主流の素材ではなくあえてガラスを使用している点もそうだが、微妙な変化を付けた完全に同型のレンズを複数枚ずつ送ってきている。精度と生産スピードが異常なんだ。

 もう何人の若者を騙し、手術を行ってきただろうか。これ以上続けるのは精神の限界だ。しかし、私が逃げたとしても奴らはまた別の誰かを脅迫して同じことをするだろう。そもそも、あのヒキガエルのような化け物が私を逃がすとは思えない。奴らが満足するまで、あるいは私の心が壊れるまで、人殺しの手助けをし続けなければならないのだ。



9.ムーンビーストたちとその拠点に関する情報
【幽霊屋敷のうわさ】
 この情報は拠点周辺における聞き込みや婦人警官の捜索、レンの男の居住地の捜索において得られる可能性がある。
 ここ3日ほど、S市郊外にある古い二階建ての家(ムーンビーストたちの拠点)に幽霊が出るといううわさが立っている。それらの多くは人のうめき声が聞こえるとか、夜中に人魂が見えるとか、幽霊が出入りしているとか、よくある怪談話の類である。
 しかし、少し調べればこのうわさが根も葉もないものではなく、複数の目撃証言によって急速に広まっているということがわかる。夜にこの家を見に行く場合、イベント【発光信号】が発生する可能性がある。また、夜にこの家の付近で騒ぎ立てたりすると、中からレンの男が顔を出し、体よく追い払おうとする。昼間にレンの男がこの家にいる可能性は30%である。

【ムーンビーストについて】
 S市内に降り立ったムーンビーストは全部で三体いる。一体は高原眼科二階に潜んでおり、残る二体は拠点の地下と二階にいる。高原蓮人が死亡した場合、高原眼科のムーンビーストは夜を待って拠点へと向かうことになる。
 ムーンビーストのステータスは共通で以下の通り。このシナリオ内でムーンビーストを見た際のSANチェックは一回目が0/1d8、二回目が0/1d4となり、三回目は省略する。

ムーンビースト、月棲獣
STR16 CON13 POW11 DEX9
SIZ20 INT17 HP17 DB+1d6
武器:槍25%、ダメージ1d10+1+db
装甲:特殊な組織と構造を持つ体により火器による攻撃は最低値となる
所持技能
目星25%、聞き耳20%

【レンの男について】
 レンの男は瘤のような結び目のあるターバンを巻き、現代風の服に身を包む浅黒い肌の男である。レンの男は一人しか連れてこられておらず、ムーンビーストに酷使されている。彼らは高原医師との折衝を行うほか、被験者に埋め込まれたレンのガラスの起動とその確認を行う役割を持っている。探索者とは事件現場で遭遇することもあるだろうし、目撃情報から待ち伏せて接触を図る可能性もあるだろう。
 レンの男は片言の日本語を喋るばかりであり、単純に問い詰めたところで情報は得られない。彼の持ち物を調べると、赤いチョークの入った袋と探索者の知らない言語を英語と日本語に変換した手作りの簡易辞書が見つかる。しかし、〈目星〉に成功すれば、服の中に隠し持っていた高原眼科のパンフレットと高原眼科で手術を行った患者の個人情報、そして護身用に持っていた一枚の「レンのガラスコピー」を見つけることができる。パンフレットには拠点から眼科までの道のりが赤黒い塗料で描かれているが、これは人間の血液であり、この事実に気が付いた探索者は【0/1d2のSANチェック】を行う。また、KPは探索者にターバンの中身を確認するかどうか尋ねること。
 レンの男を言い逃れができない状況に追い込んだ場合、イベント【追い詰められたレンの男】を起こす。なお、レンの男たちは拷問慣れしているため、拷問をちらつかせて脅すことは下策である。
レンの男のステータスは以下の通り。
STR10 CON13 POW13 DEX10
APP8 SIZ13 INT14
HP12 MP13 DB+1d4
武器:ナイフ25%、ダメージ1d4+db
装甲:瘤の付いたターバンにより頭への攻撃に1点の装甲
頭の角を目撃した場合、【0/1d2のSANチェック】
裸のレンの男を見た場合、【0/1d5のSANチェック】


10.拠点における探索
【拠点】
 ムーンビーストたちの拠点は都市郊外にある古い二階建ての一軒家であり、通常は二体のムーンビーストが居る。ここ十数年は誰にも管理されておらず空き家状態になっているが、内部はムーンビーストたちによって改造されており、水道は通っていないものの電気は使える状態になっているほか、侵入者を捉えるための複数のトラップが仕掛けられている。
 拠点には一般人の青年男性と女性警察官という二人の生存者が居る。青年のほうは発狂した状態で拘束され虐げられているが、女性警察官は隙を見て脱出し、屋根裏部屋に潜んだまま外に向かって発光信号を送り続けている。

○拠点の探索に関して
・帯電した電化製品
 この家にはトラップとして帯電した電化製品がいくつも置かれている。警戒していると宣言があれば適当な技能ロールに成功することで帯電の事実に気が付くことができるが、失敗するなどして無警戒に触れようとし、その人物が〈幸運〉に失敗した場合には感電により1d10ラウンドのスタン状態に陥る。この際、声を上げてしまうかはPOW*5ロールで判定し、失敗した場合には侵入発覚ロールを行う。
 電化製品が帯電している事実を認識した後は、技能を使用することなく電化製品の帯電の有無について知ることができる。
・侵入発覚ロール
 拠点の中にいるムーンビーストは、話し声の大きさなどに無頓着な探索者が侵入した場合部屋を移動する度〈聞き耳〉の素の値で、探索者たちが警戒して行動している場合には半分の値で、トラップに引っかかるなどで大声を出した場合には2倍の値でロールを行い、成功した場合には不意打ちの体制を取ろうとする。この時、探索者たちが〈聞き耳〉に成功すれば、どこかで物音がしたことに気が付くことができる。侵入している探索者が〈忍び歩き〉などの隠密技能に成功している場合、判定自体を省略する。

○外周
拠点2.png
 正門に当たる場所には鍵がかけられている。この鍵を開けようと試みる場合、〈機械修理〉-20か〈鍵開け〉に成功する必要がある。塀は2m弱と高いが、一部は上部が50cmほど崩れている。
 庭は歩道が整備されている正面玄関から正門にかけてこそまだ草が伸びていないものの、家の周囲は雑草が伸び放題になっている。崩れた塀の近くにはとらばさみが仕掛けられており、〈目星〉に成功しなければ〈幸運〉に失敗した探索者はとらばさみに引っかかり、1d4のダメージを受ける。

○一階
・玄関
 車いす(とムーンビースト)が通れる程度に広い玄関であり、入ってすぐに廊下と上へ続く階段が目に入る。掃除がされている様子はないが、玄関には革靴とスニーカーが二足ずつ置かれている。〈目星〉に成功するか下駄箱を確認すると宣言があれば、十数人分の靴が無造作に突っ込まれていることがわかる。

・ガレージ
 何年も使われてないガレージである。ガソリンの入った車の他、工具類などが豊富にある。〈目星〉によってガレージにあるものを探すことができるほか、ここ数か月の間に何者かがこの場所を漁った形跡を見つけることができる。探索者たちは車を改造して簡易的な爆弾にすることも、ガソリンを抜き取って家を燃やすことも、車を動かして脱出することも可能である。


・洗面所・バスルーム
 洗面所にはワイヤートラップが仕掛けられている。警戒するという宣言があれば、〈目星〉によって事前に発見できるかの判定を行う。〈目星〉に失敗するか無警戒にこの部屋に侵入した場合、〈幸運〉に失敗した探索者はワイヤーが足の肉に食い込み、1d2点のダメージを受ける上拘束状態に陥る。この罠から抜け出すためには刃物などによってワイヤーを切るか、DEX*5ロールを行ってワイヤーをほどかなければならない。ほかに、帯電した洗濯機が置かれている。
 あまり使用感のないバスルームであるが、〈聞き耳〉の2倍に成功すれば血なまぐさいにおいが漂っていることがわかる。〈目星〉に成功すれば、ほこりの付き具合から水は使用されていないものの出入りはあったようだとわかる。バスタブは閉じられているが、ふたを開けると血のにおいと共に血の染みついた衣類が無造作に投げ込まれていることがわかる【0/1のSANチェック】。
 
・リビングダイニングキッチン
 一見すると普通のリビングダイニングキッチンに見えるが、イスやキャビネットなどがあるもののテーブルがないなど、家具が妙に少ない。〈アイデア〉に成功すれば、カーペットの位置がレイアウト上不自然であることに気が付く。カーペットを裏返すと、床に直径5㎝ほどの穴が3つ開いており、空いた穴に血と肉片がこびりついていることがわかる【0/1d2のSANチェック】。
 電子レンジやトースターなどの電化製品は帯電しているものの、冷蔵庫のみは帯電していない。冷蔵庫の中を除けば、解体された人間の手足が押し込まれていることがわかる【1/1d4+1のSANチェック】。

○二階
拠点3.png
・マスターベッドルーム
 ベッドは二つあり、どちらにも布団が被せられている。布団をめくると、どちらのベッドにも10数個ほどの血が滲んだ穴を見つけられる。ベッドの下にはワイヤートラップが仕掛けられており、拭きとれなかった赤黒い血の色で変色している【0/1d3のSANチェック】。

・トイレ、収納スペース
 ここには特にトラップなどはないが一般的な家庭にありそうなものなら収められている可能性が高い。

・製造室
 この部屋にはレンのガラスの製造装置及びレンのガラスの製法が書かれた石板が置かれており、二体いるムーンビーストのうち、誘き出すなどしない限り一体は常にこの部屋にいる。
 石板は全部で5枚あり、その表面には探索者が理解できない言語や絵で文章が書かれている。〈アイデア〉の半分か〈目星〉、あるいは〈機械修理〉に成功すれば、石板に描かれている部品の数々が機械の一部として組み込まれていることがわかる。石板の大きさや形はまちまちであり、それぞれ1d30kgほどの重さがある。石板の表面を削り取る場合、DEX*5ロールに成功すれば1分、失敗した場合削り終えるまでに1d10分が一枚につきかかる。
 レンのガラス製造装置は電子レンジと顕微鏡をかけ合わせたような奇怪な構造をした、50㎝四方ほどの立方体上の機械である。扉のような部分を開くと中には「レンのガラスコピー」が入っている。〈アイデア〉の半分か〈物理学〉、〈生物学〉など実験を伴う専門技能に成功した場合、この装置を操作する上で見やすい位置に石板が並べられていることから、石板には操作方法も書かれているのではないかと感じる。レンのガラス製造装置を復元不能なレベルで破壊する場合は20ポイント以上のダメージを与える必要がある。

・物置兼レンの男の部屋
 元々は書斎であった部屋にレンの男が住み着いており、月から持ってきた物品が乱雑におかれているほか、レン高原における言語と英語の簡易辞書などが広げられている。この二種類の辞書を用いて〈図書館〉ロールを行うことで、製造室に置いてある石板の内容を一部読み解くことができる。

○屋根裏と地下室
・屋根裏部屋
拠点4.png
 屋根裏部屋へと続く隠し階段は〈目星〉に成功することで発見できる。屋根裏部屋の存在に当たりを付けている場合、成功率が20%上昇する。
 屋根裏部屋には瀕死の女性警察官が潜んでおり、夜になるたび発光信号を外に送り続け、助けを待っている。しかし、既に屋根裏部屋に逃れてから三日間が経過しており、拷問による消耗もあってかろうじて会話ができるのはシナリオ初日のみである。二日目は◆女性警察官のメモに加え簡易的な応答による意思疎通が図れる程度、三日目以降は探索者たちの中で最も〈幸運〉の低い探索者が〈幸運〉ロールに失敗した場合死んでしまう。
 女性警察官から聞き出せるのは以下の情報である。
・連続失踪事件がこの家の周辺で発生していることから聞き込みを行っている最中、この家で家主らしき外国人から話を聞いていたところ、家の中で顔が口になったヒキガエルのような槍を持った化け物に襲われ、地下で拷問を受けていた。
・襲われた際拳銃を発砲したが、化物にはあまり聞いている様子がなかった。
・化け物たちに拷問されている間、隣に一人の男性が居た。

◆【女性警察官のメモ】
「いえにわな ばけものは2 やり じゅうはだめ ちかにひとじち」

・地下シアタールーム
拠点.png
 地下室へつながる扉は防音加工がなされており、中の様子を扉越しに〈聞き耳〉で探る場合、成功率は1/5になる。地下室はムーンビーストの拷問部屋に改造されており、血肉にまみれた部屋の隅には解体された人間の死体や破壊された家具が積み上げられているほか、拷問用の武器などが無造作に転がっている。部屋の真ん中にはサンドバックのように宙づりにされた男がぶら下がっており、このような光景を見た探索者は【1/1d6のSANチェック】。基本的にこの部屋には常にムーンビーストが1体いる。
 吊るされた男は度重なる拷問により正気度が0、耐久力4となっているため、彼を救出する場合には彼の拘束を外し、誰かが連れ出す必要がある。この処理には最低でも戦闘ラウンドで救出と脱出の二回分の行動が必要になるだろう。


11.発生するイベント
【SOS発光信号】
 ムーンビーストたちの拠点の屋根裏にはムーンビーストの拘束から抜け出した女性警察官が潜んでいる。彼女は手足の腕がおられ満足に動ける状況にないが、手持ちのハンドライトを使って夜な夜な窓に向かってSOS発光信号(・・・---・・・)を繰り返し出している。この現象を見て〈オカルト〉、〈アイデア〉、〈物理学〉*5に成功すれば、この光がオカルト的なものではなく、人為的に発されていることがわかる。それぞれの1/5(物理学は素の値)に成功すれば、この光がモールス信号であることがわかる。

【瞳の中の“死”】
 話をしている最中に患者が「あっ」と声を上げると、「白い濁りがなくなって良く見えるようになった」と呟く。次に「ここはどこだ?」「大きなクモがこっちに近寄ってくる」と発言した後患者は悲鳴を上げ、直後患者の後頭部を食い破るようにしてレンのクモが姿を現し、患者の頭部を喰らいながらその場にいる探索者に襲い掛かることになる。レンのクモと衝撃的な人の死に様を目撃したことにより【1d3/1d12のSANチェック】を行う(親友の死であった場合+1点しても良い)。
 戦闘は1d3ラウンド後に突如としてレンのクモが跡形もなく消え去ることで終了する。この時、〈聞き耳〉に成功していればレンのクモが消える瞬間に「パキッ」という何かが割れる音が聞こえたことに気が付く。死骸に対する〈目星〉に成功すれば、割れたガラス片を見つけることができる。
レンのクモの必要なステータスは以下の通り。

レンのクモ
タッチ30% 3d6
噛みつき 40% 1d3+POT18の毒、CON対抗に失敗した場合3d6のダメージ

 この時、現場の近くではレンの男がレンのガラスを起動する呪文を使用している。導入以外であれば、レンの男と接触する可能性があるだろう。探索者が声をかけるなどすればレンの男は無視するか、場合によっては走って逃げ出そうとする。追いかける場合、【追い詰められたレンの男】も参照すること。

【高原蓮人の発狂】
 探索者たちが彼のメッセージに気付かなかった場合、あるいは彼が助けを求めていることに関して探索者たちが発言するようなことがあれば、高原医師は「上に居る怪物に脅されて殺人の手助けをさせられているんだ、助けてほしい!」と叫び始める。しかし、数秒後には高原医師の様子を警戒して一回に下りていたムーンビーストの槍が胸を貫き、探索者たちは彼の血飛沫を浴びることになる。彼は白衣のポケットから手記と折りたたまれた紙を探索者たちに託し、槍を引き抜かれた医師が絶命して倒れるところで戦闘が開始される【1/1d10のSANチェック】。
 ムーンビーストはその場にいる探索者たちを全員殺そうとするが、不特定多数の人間に目撃される事態は避ける。そのため、探索者たちが逃げ出す場合にはその場で最も〈幸運〉の高い探索者が〈幸運〉ロールに成功した場合、人目があったということで追撃を避けることができる。〈幸運〉に失敗した場合はムーンビーストとのDEX対抗ロールを行い、失敗者は1ラウンドムーンビーストの攻撃対象となった上で再度同様のロールを行う。

【追い詰められたレンの男】
 レンの男が探索者たちに追い詰められると可能な限り逃げようとするが、取り押さえられると観念した様子を見せ、抵抗せずにおとなしくなる。その後、レンのガラスコピーに関して使用方法を伏せた上で説明を加えながら、隙をついてレンのガラスの起動を試みる。この時探索者が〈心理学〉に成功すれば、男の不審な様子に気が付くことができる。
 特に探索者が警戒しなければ、男は自分の血で地面ないし手のひらに印を描き、詠唱を行ってレンのガラスを起動する。その後、探索者たちは現れたレンのクモと1d3+1ラウンドの戦闘になり、レンの男は拠点に向かって真っすぐ逃走する。ただし、レンの男が拘束されているような場合、戦闘時に攻撃対象として選ばれた時レンの男が〈幸運〉に成功すれば運よく攻撃を利用して拘束を解くことができるが、失敗した場合には通常通りダメージを負う。
 このイベントによる脱出に失敗した場合、探索者とKPが望む必要な情報をこの男から与えること。


12.シナリオの解決方法
 このシナリオはムーンビーストのレンのガラス複製計画に端を発しており、この計画を中止に追いやれば連続殺人・失踪事件を止めることができる。
 スマートなやり方としては、彼らが持ちこんだレンのガラスの製法が書かれた石板及びガラスの作成装置を破壊してしまうことである。そうすることで、ムーンビーストと戦うことなく彼らの計画を中止に追い込むことができる。破壊する方法としては拠点の中で破壊する場合と拠点から装置や石板を運び出したうえで破壊する場合が考えられるが、どちらの場合も拠点の中に居るムーンビーストにどう対処するかが鍵となる。
 ムーンビーストたちを全滅させるというのも一つの手ではあるが、彼らの巣と化した拠点で戦う場合にはいくつかのトラップをかいくぐる必要があり、また彼らの戦闘能力は侮れるものではない。警察を動員することも可能であるが、拳銃を持ったNPCが発狂する可能性に加え、首尾よく制圧を行わなければムーンビーストたちは緊急に呼び寄せた黒いガレー船に乗ってドリームランドへと逃げ込んでしまうことになるだろう


13.正気度報酬
S市における連続殺人・失踪事件を止めた…1d3ポイント
レンのガラス製造装置と石板を破壊した…1d6ポイント
サンプルをすべて破壊した…1d3ポイント
倒したムーンビースト一体につき1d3ポイント
救出した人間一人につき1d3ポイント
ムーンビーストを取り逃がし、かつ製造装置と石板を持ち出された…-1d6ポイント
取り逃がし、サンプルのみを持ち出された…-1d3ポイント
殺害した・された人間一人につき-1d3ポイント

【更新履歴】
Ver1.0.1…導入を一個追加、ガレージの項目が抜けていたのを追加、マップを追加
Ver1.1.0…全体的に情報量を増加
ブログトップ画像をいらすとやで探したらヒットしたけどネタバレが過ぎるなと思い直し張るのを自重した眼内レンズの画像がこちら
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